『ガイラルディア様、申し訳ございません…!』
『何を謝る事がある?ヴァンデスデルカ』
『貴方をお助けすることが私には、まだ出来ない…』
ガイの乾いた笑い声が部屋に響く。
『構わないよ。寧ろ俺はあの男に抱かれている事が嬉しい』
ヴァンデスデルカの青い瞳が「何故?」と訴えてくる。
『だってヴァンデスデルカ。抱かれれば抱かれるほど、
憎しみが強く、濃く、鮮やかに、面白いほど増していくんだ』
こんなにも深く、恐ろしい憎しみがあったのか、と言う程に。
口の中の肉塊から白い欲望が吐き出される。
途端に広がる苦味と生臭さに眉を顰めながらも全てを飲み込み、
視線を上へと向ければ、血の色をした髪の男が俺を射抜く。
殺してやりたい。
肉棒を舐め上げ、相手の射精を促すこの奉仕は好きではない。
咥えている時に何度も憎さのあまり、噛み千切ろうとする自分を
必死に留めなければいけないから。
噛み千切ってしまえればどんなに楽になることか。
どんなに清々しいことか。
どんなに気持ち良いことか!!
けれど俺の復讐はそんなものでは足りないから。
なんとか自分自身を抑える。
「ガイ、四つん這いになれ」
広い、豪華な装飾が施された部屋の中、憎い男の声が響く。
「はい…」
キングサイズのベッドがキシリと音を立てる。
言われた通り、四つん這いになって、男とは反対の方を向く。
既に全ての衣服を脱いでしまっているので、
この格好をしたことによって、秘部が全て相手に丸見えとなった。
いつもと同じ行為だ。
この後何をされるかなんてわかりきっている。
予想通り、後ろの穴に太い指によって塗られる油の感触。
そして早急に指を1本、2本と入れられ解されていく。
「ん、はっ…」
ぐちゅぐちゅと粘着質な音が部屋を満たす。
中でばらばらに指は動き、
肉壁を引掻き、抉るように深く付きいれ、勢いよく引く。
そんなに早く突っ込みたいのか。
心の中でだが、鼻で笑う。
その瞬間、前立腺を引っ掛かれた。
「ああぁっ…!」
全身に走る快楽。
一気に自分自身の肉棒も限界まで立ち上がり、
涎を垂らす。
「腰を振って…そんなに挿れて欲しいのか?」
「は、い…挿れて欲しいで、す…」
早く、その汚くて醜い欲望を中に挿れて、
満たしてくれ。
俺の中を憎しみで満たしてくれ!!
「ああああ、ぁぁ、んぅっ!!!」
容赦なく、太い肉棒が貫いた。
肉壁を掻き分けて最奥を突く。
ぐちゅん!と一際大きな水音がした。
「よく締め付けてくる。そんなに気持ち良いのか?」
「はい、気持ち良い、です…!」
この瞬間が一番キモチイイ。
肉体的な快楽ではない。
一気に全身を駆け巡るように満たしていく憎しみが、殺意が
堪らなく気持ち良いのだ。
「は、やく、動いて…っ」
「クク…この淫乱が」
早く動いて、
もっと
もっと
俺の中を憎しみで満たしてくれっ!
「あ、あっんぁ、あうっ…!」
ぐちゅぐちゅ。
パンパンッ!
粘着質な水音と肉のぶつかる乾いた音。
対照的な音が部屋に木霊する。
肉壁を抉られて、最奥を突かれると
脳天を突かれたような衝撃がくる。
四つん這いにされた体は壊れるのではないかという程に
激しく揺られ、
荒い呼吸を繰り返していた為、閉じられない口からは
唾液が糸をひいてシーツに垂れ落ちる。
背中に感じる、男の垂れ落ちてきた汗が堪らなく気持ち悪くてキモチイイ。
憎しみが、
殺意が、
増していく…!
「お前は確か、痛い方が気持ちよかったな…?」
「…?」
言葉の後、動きが止まり、そして僅かに動く男。
何かを探しているのか。
カタンと音がして、男は片手でしっかりと腰を掴んだ。
「もっと気持ちよくしてやろう」
ざくっ
「あ、あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」
「ハハっ!よく締まる!!」
右手に、短剣が突き立てられた。
その勢いのまま右手を貫通し、シーツに縫い止められる。
美しく光る銀の刃に悲鳴を上げる自分の顔が映る。
「ああっ、ひぃ、いっ…!」
どくどくと血が流れ、シーツを赤く染めていく。
痛い。
痛いがキモチイイ。
憎悪が
膨れ上がっていく―――!!!!!
痛みと、憎しみによって昂ぶった感情によって
後ろの穴が収縮したようで、
男は馬鹿みたいに腰を振りながら鼻息を荒くしている。
先程よりも速く打ち付けられる肉棒。
一段と大きくなった肉棒は肉壁を擦り上げ、
前立腺を集中的に突いてくる。
「そろそろ出すぞ」
「は、ひ…!出して、ください…!!」
嗚呼。
殺してやりたい…!!!!!
身を焦がすような殺意に、憎しみに。
俺はまた、酔い痴れる。
「…イ…ガイ、大丈夫ですか?」
「え…?」
じっとりと汗ばむ、何も纏っていない体。
目の前には心配そうに覗き込む、裸の男。
綺麗な赤い瞳に、自分の姿が映っている。
周りを見渡せば、先程の部屋とは違う、
質素で簡素な部屋。
自分が横たわっているベッドもシングルベッドだ。
ああ、さっきのは。
「夢か…」
いや、違う。
過去だ。
「大丈夫ですか?随分魘されていたので…」
「ああ、大丈夫だよ」
にこりと笑って見せれば、それでもまた心配そうな顔。
「そんな心配するなって」
笑って、目の前の男の首に腕を回した。
そのまま引き寄せて、肩口に顔を埋める。
ひんやりとした体温が気持ち良い。
「ガイ?」
「なぁ、ジェイド。しようぜ?」
俺の言葉に男は驚き、赤い目を大きくした。
「どうしたんです、一体」
「なんでもないよ。ただジェイドに抱かれたくなっただけだ」
薄い唇に口付ける。
サラサラと顔を撫でる栗色の髪がくすぐったい。
薄く開かれた口に舌を差し込めば、
ジェイドが俺の頭を掌で包み込んで、
舌を絡ませてきた。
深くて、長い口付け。
「ん、ふっ…」
ゆっくりと唇を離すと、銀色の糸が間を繋ぎ、
ぷつりと切れた。
「俺な、ジェイドとして初めて知ったんだよ」
「何をです?」
「この行為の意味」
かつて憎しみだけで生きていた男は
そう言って美しく微笑んだ。
その意味