「ん…っ…!」
己の内に楔を打たれ、どの位経っただろうか。
時間の上では数分のことだろうが、
熱に浮かされ早く上り詰めたいと急いている自分にとっては
永遠にも感じられる時間で。
「う、ごけよ…!」
「ん?」
どろどろに溶かした中に肉棒を突き入れ、
その上に座らされ、後ろから抱き締められた状態で、
正守は少しも動かなかった。
ただ俺の髪を指に絡めて遊んでいるだけ。
相手の顔も全く見えない。
けれど正守が上機嫌なことだけは伝わってくる。
「このままでイってみなよ」
刺激を期待し、待ち兼ねている己の内壁は、
男が言葉を発するその僅かな振動だけで過敏に反応し、収縮する。
そして、俺の喉の奥から漏れる声。
「っ…、このままでって…」
「お互い動かないで、このまま。イけるだろう?」
なんてことを言い出すんだ、この男は。
「んなの、無理…っ」
「できるよ。ほら、俺が入ってるの、もっと感じてみな?」
その言葉に、嫌でも俺を貫いている熱を意識してしまって。
びくびくと体中が波打つ。
意識を集中すればする程、中にいる兄貴の形を、大きさを、硬さを知ってしまって。
無意識の内に肉壁が収縮する。
きゅう、と肉棒を締め付けてしまって、
そしたら更に肉棒は大きく、硬くなって。
それに俺は、思わず体を震わせる。
愛撫を受けてるわけでも、
動いてるわけでもないのに、
快楽が体を駆け巡る。
「そう、その調子」
クク、と兄貴が後ろで喉を震わせて笑う。
その振動に、また俺は兄貴を締め付けてしまって。
「ほら、良守。次は動いているところを想像して御覧?
俺が良守の中を奥まで突いて、ぐちゃぐちゃに掻き回すところをさ」
この、熱い欲望が俺の中を掻き回す。
一番奥まで突いて、ギリギリまで引いて、
淫らな音を立てて出し入れして…。
何回も、何十回も与えられたその快楽を思い出し、
体が勝手に疼き出す。
ビクビクと震え、自分の肉棒も触られていないというのに
限界まで起ち上がり、蜜をとろとろと流し続けている。
じわじわと熱が増し、自分の理性も何もかもを追い詰めていく。
この感覚はまるで、兄貴に侵されていく自分のようだ。
兄貴はこうして俺をゆっくり、じわじわと、
生きている限りずっと、侵していくのだ。
その先に行ってしまえば想像もつかない快楽が押し寄せ、
こんな苦しみから開放されて楽になるんだろうと、わかっているけれど。
俺は怖くて足を踏み入れれずにいるんだ。
怖い。
怖い。
兄貴によって侵され、犯されていく自分が。
けれど、どうして、
どうして
それを嬉しく思う自分がいるんだ…。
「あ、あ、あ…っっ…!」
自分でもわかる。
ぎゅうぎゅうと中を締め付けているのが。
止めたいのに、止まらない。
全身が強張り、汗が吹き出る。
「あ、も、う…っ、兄貴…っ!」
「うん」
自分を抱き締める太くて、がっちりした腕に爪を立てて、
俺の意識は白に染まった。
「んぅ、あああぁぁっ…!」
自分の腹部に吐き出される熱。
けれど、体の痙攣にも似た震えは止まらなくて。
「よく出来たね」
怖いくらいに優しい声音。
耳元で囁かれ、頭を撫でられる。
それだけで俺はゾクゾクして、
また締め付けて。
「ご褒美、あげなきゃな?」
そのまま前に押し倒された。
咄嗟に腕で上体を支える。
自然と四つん這いの状態になり、兄貴に腰を掴まれる。
兄貴はまだイってなくて、俺の中を貫いていて。
「兄貴…?」
「気持ち良くしてあげるよ」
「…っ!?あ、ああっ、んっ、ひぃっ…!!」
ズン、と一気に最奥まで突かれる。
喉まで貫かれたように感じる程の衝撃、
そして快楽。
「あ、あっ、ひ、んぁあっ!!」
粘着質な水音と、肉のぶつかり合う音、
そして自分の、女のような喘ぎ声が響いて。
気持ちいい。
気持ちいいけれど、怖い。
何かが、何か闇のようなものが俺を捕まえようと迫ってきてる。
どうしたらいいんだ?
この闇に捕まってしまったら、俺は…。
「ひ、あっ、た、すけて…助けて…!」
兄貴。
「大丈夫。お兄ちゃんが傍にいるよ、良守」
生きている限り
侵し続ける兄を俺は拒むべきなのが、
受け入れるべきなのか、
わからず俺は恐れて、
今日も兄貴に助けを求める。